不整脈とは、心臓の中で電気信号の流れが正常ではなくなる状態のことを言います。
大きく分けると、心拍が速くなる・遅くなる・不規則になる、という3つの状態に分類されます。
心臓には洞結節(どうけっせつ)という電気信号を規則的に送るペースメーカー(発電所)の役割をする場所があり、そこからの電気信号を心臓全体に伝えることにより心臓は収縮と弛緩を繰り返します。この電気信号が乱れると、動悸・呼吸困難感・脈の欠落といった症状が現れることがあります。これらの症状は突然起こり、徐々にあるいは突然おさまるため、病院に受診された際には不整脈の症状がほとんど見られない患者様がほとんどです。
その自覚症状も様々ですが、「不整脈」と一口にいってもその種類は細かく分類すると何十種類にもなります。
以下にその代表的なものを示します。
治療を必要とせず、経過を見てもよいものも多くありますが、中には緊急治療が必要となるもの、致命的になるものもあり、そこが不整脈の怖さがあります。
もし「不整脈があります」と診察あるいは健康診断などで指摘があった場合には、その種類/分類まで聴いておくことをお勧めします。
ペースメーカー外来について
当院では、心臓にペースメーカーや除細動器を植え込まれている方を対象に、安心して通っていただける「ペースメーカー外来」を設けています。
ペースメーカーは心臓の大切な働きを支える医療機器で、定期的なチェックが欠かせません。
専用の機械を使って、身体への負担なく安全に電池や動作の確認を行います。
不整脈や体調の変化があるときは、専門の医師と連携して適切な対応をいたします。遠方の医療機関へ通院中の方も、当院での継続フォローが可能です。お気軽にご相談ください。
不整脈とは?


不整脈の代表的な種類
● 一般的に持続的に脈が速くなる(可能性がある)不整脈
- ・発作性上室性頻拍症
a )房室結節リエントリー性頻拍
b )房室リエントリー性頻拍
[WPW(Wolf-Parkinson-White syndrome)]
c )心房頻拍 など - ・心房細動
- ・心房粗動
- ・心室頻拍
- ・心室細動
● 一時的に脈の欠落が見られる不整脈
- ・上室性期外収縮
- ・心室性期外収縮
● 一般的に脈が遅くなる不整脈
- ・房室ブロック(Ⅰ度(軽症)~Ⅲ度(重症)まで存在)
- ・洞不全症候群
検脈の重要性
動悸を自覚して、不整脈を危惧して病院受診した時には不整脈はすでにおさまっていることがほとんどです。
動悸があるとき、自覚しているときに一番近くにいるのは自分自身です。なので「検脈」ご自身で脈拍を測っていただくこと、が重要となります。
具体的には「約10秒間手首の動脈を触知して何回くらい脈を打っているか、乱れているか」を調べていただきます(図参照)。
これを行っていただくことによって、不整脈診断の精度が格段に上昇します。
さらに、例えば脈拍数が1分間に例えば150回以上、あるいは40回未満などの極端な頻脈/徐脈が見られる際には早急に医療機関を受診することが必要と考えますので、その緊急性も評価できるため、「検脈」は重要であると考えられます。

治療法
不整脈の治療法には以下のものがあります。
当院で行えるものは、「薬物療法」のみですが、その他侵襲的な治療が必要と判断した場合には、迅速に高度医療機関への転院相談を行います。
● 薬物療法
腸抗不整脈薬の内服あるいは点滴治療を行います。
● 非薬物療法
- ・カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)
心臓にカテーテルという細い管を進め、心筋の中で余計な電気信号を出す部分を診断、そして高周波による焼灼や冷却することで治療をする方法、最近では電気パルスを用いて治療する方法も施設によっては行えるようになっています。 - ・ペースメーカーあるいは植込み型除細動器移植
皮下にジェネレーターと呼ばれる電池、心臓の中にリードと呼ばれる電極を留置することで、徐脈にならないように心臓が発する電気を感知したり、電気刺激を与えたりする治療法。最近ではリードを用いないリードレスペースメーカーというものも移植できるようになっています。脈の遅い不整脈はペースメーカーでしか治療できません。
ペースメーカーの機能に加えて危険な致死性不整脈が起きたときに電気ショックを与える機能を追加した機械が植込み型除細動器です。
診療の流れ(初診~定期通院)
【初診】
- ・予約または紹介状を持参して受診
- ・問診、身体診察、心電図やレントゲンなどの初期検査
【定期チェック】
- ・外来でのペースメーカーチェック(約10分)
- ・結果説明、薬の処方、必要に応じて診療調整診
- ・外来でのペースメーカーチェック(約10分)
- ・結果説明、薬の処方、必要に応じて診療調整診

● 対象となる患者様
- ・他院でペースメーカーを入れて現在通院中だが、通院先を変えたい方
- ・電池交換の時期が近いと言われた方
- ・不整脈があり、植込み型医療機器が必要か診断希望の方
● 対応可能なペースメーカーのメーカー
当院では以下のメーカーのペースメーカー/ICD/CRT-Dなどの定期チェックに対応しています。
- ・メドトロニック(Medtronic)
- ・ボストン・サイエンティフィック
- ・アボット(旧セントジュードメディカル)
- ・バイオトロニック
など
よくあるご質問
-
Q1.
ペースメーカーとはどのようなものですか?
-
A.
ペースメーカーとは、心臓の拍動が遅くなったときに電気信号を送って正常な脈を保つための医療機器です。
通常、皮膚の下に植え込み、電極(リード)を通じて心臓に信号を伝えます。
近年電極(リード)がない、リードレスペースメーカーという機器も登場しました。
-
Q2.
ペースメーカーの電池はどのくらいもちますか?
-
A.
一般的に約8~10年程度もちます。
定期的な外来チェックで電池の残量を確認し、交換が必要な時期を事前に把握できます。
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Q3.
ペースメーカーを植え込んだら日常生活に制限はありますか?
-
A.
多くの場合、日常生活はこれまで通り行えます。
ただし、強い磁気を発する機器(電磁調理器、溶接機、スピーカーなど)には注意が必要です。
携帯電話も本体から15cm以上離して使用してください。
-
Q4.
空港の金属探知機やMRI検査は受けられますか?
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A.
空港の金属探知機は反応することがありますが、身体に影響はありません。
必要な場合はペースメーカーカードを提示しましょう。
MRI検査は機種によって対応の可否が異なるため、医師にご相談ください。
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Q5.
ペースメーカーのチェックはどのように行いますか?
-
A.
専用のリーダーを胸の上に当てるだけで、機器の状態やリードの異常、不整脈の履歴などを確認できます。
痛みはなく、数分で終了します。
-
Q6.
運動や入浴はしても大丈夫ですか?
-
A.
術後の回復状況にもよりますが、医師の許可が出れば軽い運動や入浴も可能です。
ただし肩の動かし方や激しい運動には注意が必要です。
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Q7.
他の病院でペースメーカーを入れたのですが、石井病院でチェックを受けられますか?
-
A.
はい、受けられます。
当院では複数メーカーの機器に対応していますので、通院のご負担軽減のためにも、ぜひご相談ください。
ペースメーカー外来 担当医師 飯塚 貴士
日本内科学会 総合内科専門医、日本循環器学会 循環器専門医
日本不整脈心電学会 不整脈専門医
日本総合健診医学会 ・日本人間ドック・予防医療学会 人間ドック健診専門医
- 2011年
- 群馬大学大学院 医学系研究科 内科学講座 循環器内科学 入局
- 2011年
- 深谷赤十字病院 内科
- 2013年
- 前橋赤十字病院 心臓血管内科
- 2015年
- 群馬大学医学部附属病院 循環器内科
- 2019年
- 医療法人三省会 堀江病院 内科 医長
- 2024年
- 医療法人石井会 石井病院 内科
外来担当医表はこちらからご確認ください。
1度ペースメーカー移植を行うと、基本的に生涯治療し続けることとなります。
ペースメーカーの電池などの耐久年数は現在一般的に8~10年となっており、その電池残量やリードの断線などの問題がないか、設定が現在の状況に適しているか、など定期的な機械のメンテナンスが必要となります。
それを行うのがペースメーカー外来で、当院でも2025年5月に開設いたしました。
今現在やや遠方の病院に通院してペースメーカーチェックを受けている方は、今後当院でも定期通院が可能です。
それにより少しでも通院の負担が軽減されればと考えておりますので、ぜひ気軽にご相談ください。
